「ダメな本屋さんネ」
(匿名希望、ある書店のつぶやき)
なぜ、私の店が神田村を利用するようになったのか、そのキッカケをお話ししたいと思います。
どこのお店でも仕入先の取次は大抵一つだと思います。私も開店以来一つの取次で全てを仕入れていました。あるとき聖教新聞社の「人間革命」の新刊が出ることになり、いつもの通り、取次から案内をもらい、締め切りに間に合うように予約の手配をしました。問題はその締め切りの後に、馴染のお客様からまとまった数の注文を受けたときでした。急いで取り次ぎに電話しましたが、締切り後なので当日には間に合わないし、その後の手配はいつになるかわからないと言われました。いつものようにしょうがないと思いつつ、お客様にその旨を説明し、遠回しにそれでもよければとわかったようなわからないような注文の取り方でした。するとお客様は穏やかな口調で「その問屋さんはそう言っているけれど、あんたの店ではどうなの、どこか他をあたってみた、どうしても入らないの、ただ問屋さんから言われただけではダメね、努力が足りないわ、ダメな本屋さんネ」 そういわれてみれば、今まで一つの取次と版元だけに従って、それで済まして他をあたってみることなんて全然していませんでした。お客様に促されて真っ先に思いついたのが当時の神田村の問屋街でした。
何軒かに問い合わせしたところ、ある一軒の問屋で発売当日、お客様の満数を確保することが出来ました。この一件で今までの自分の店のあり方というか、お客様に対する注文の受け方がとても受身だったと思いました。「すみません、チョッと問屋さんに無いのですが、お客様どうしましょうか」注文を受けても相変わらず入荷するのが遅い、業界の事情そのままがお客様への対応でした。少しでも自分なりの努力や行動をしないとお客様に見離されてしまう。「ダメな本屋さんネ」というお客様の叱責が私の神田村への利用になりました。あれから種々チャンネルが出てきて、今では神田村のいろいろな問屋を利用するようになってきましたが、皆さんのお店ではどうでしょうか。